梨木 果歩 「渡りの足跡」

渡りの足跡 (新潮文庫)

渡りの足跡 (新潮文庫)



野鳥観察(主に渡り鳥)を趣旨とした本である。
エッセイの分類としてるけれど、ルポルタージュを取り入れているので恐ろしく内容が
濃いものになっている。単なる鳥の話かよ、と侮るなかれ。これは人の原点回帰の話と
差し替えても過言じゃない。
いや、これはそう捉えるべきだろう。
渡る鳥を追う旅の記録に人の「渡り」を間に挟む事で一層に話は深度を深めていく。
樹、草花。ネイチャーである筆者の造詣はもとより、空、大気といった表現する文章力
も話に深さを添えているのは間違いない。

一部、抜粋
------------------------------------------------------------------------- 存在は移動し、変化していく 生きることは時空の移動であり、それは変容を意味する
それが渡りの本質なのだろう 生物は帰りたい場所へ渡る 自分に適した場所 自分を迎えてくれる場所 自分が根を下ろせるかもしれない場所 本来自分が属しているはじめの場所 還っていける場所 たとえそこが今生では行ったはずのない場所であっても -------------------------------------------------------------------------

思えば、友人の何人かは「渡り」また自分も「渡っている」
願わくば良い旅でありますように。

評価は☆☆☆