小川 洋子 「猫を抱いて象と泳ぐ」

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

 

何といっても先ず、秀逸なタイトル。

本を最初に選ぶポイントは何だろうか? 作家であったり、評判であったり、帯であったりと、人それぞれ手にするポイントがあると思う。

僕の場合、作家は勿論だが、本のタイトルも重要だ。これが初見であればあるほど尚更だろう。目を惹き、琴線に響かせる。それは重要なことだ。しかも、内容を想起させるものでなければならない。

そこで、今回の「猫を抱いて象と泳ぐ」。もう、この本にはこのタイトルしかない。

 

 

さて、この本の題材はチェスだ。正直、ポーン、ナイツ、クイーン、ビショップ、キングという駒の名前は知ってるが、ルールについては全くの無知で作中に記号が出てきてもそれが何なのか、いや基盤の位置というのはざっくりとした説明があるから分かるのだけども、それが凄いことなのかはさっぱり。他に目隠し状態で(音で駒の位置が分かる)出来るとか疑問はあるが、まあ、こまけえことはいいんだよ。うん。

 

リトル・アリョーヒンにチェスを教えたマスター。鳩を乗せたミイラ。猫のポーン。象のインディラ。老婆令嬢に祖父母、弟。総婦長さん。そして、リトル・アリョーヒン。なんて小川洋子は物腰の柔らかな文章を紡ぐんだろう。反則に近いぐらいだ。

誰もが等しく、優しいお話。そして、哀しいお話。

図らずしも目頭が熱くなったのをここで告白しておく。

 

 

 

評価は☆☆☆