梨木 果歩 「 雪と珊瑚と 」

雪と珊瑚と

雪と珊瑚と

 

なんだか、梨木先生のファンサイトと思われそうなぐらい読んでますが、それぐらい外れが無いという事です。

 

どんな時でも、自分さえしっかりしてれば大抵の事は何とかなる。現になんとかなった。そんな、主人公であるシングルマザーである珊瑚、21歳が自分が泣いてると気づく所から物語は始まる。

何だかんだで紆余曲折はあるものの、とんとん拍子に事は上手く進んでいく。そんな上手い話がある訳ねえよ。いつ堕ちるんだ? いや、堕ちて欲しくねえなぁ。複雑な気持ちで読み進めていくと、娘、雪の夜泣きが始まり珊瑚の精神状況も好くないことも相まって--------------。

正直、この辺は凄い解る。理屈じゃなくて感情が先に立つものだよなぁ。子供だからって無条件に許せるものでは無いと思う。後々、自己嫌悪に陥るのだけどね。

幸いにして、珊瑚は虐待には至らなかった。そして、この日が初めて雪が珊瑚をママと呼んだ。

 

珊瑚自身、母親に放置虐待を受けていた事。そんな母親が珊瑚を信用出来ると言い切った事。元、同僚の辛辣な手紙。色々な事を珊瑚は呑み込み、前に進もうとする。ラスト、まだ重い空気が残滓にあるのだが雪の発した言葉が一気に覆す。

 

「ごあん。おいちぃ。おいちいねえ。」

「ああ、ちゃーちぇねえ」

 

そうだ。美味しい物を食べれば人は幸せだ。

目頭が熱くなったので、評価は三ツ星☆☆☆