小川 洋子 ブラフマンの埋葬
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/13
- メディア: 単行本
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静謐な文章。緩やかに物語が進行していく。
さて、タイトルにもあるようにブラフマンとは動物である。しかし、明確に種類は記されていない。主人公である「僕」の考察から読み解くと、ブラフマンの正体とはカワウソだろうと推察される。「娘」が森の動物とも言っているし。けれど、カワウソって人間に懐くものなのか? 疑問が残るが、まあフィクションなので深く考えまい。
この物語に名前が出てくるのはブラフマンだけで、あとは便宜上に記されている。碑文彫刻家。レース編み作家とホルン奏者。娘。そして、僕。人は名前があることで感情移入するという。書き手である小川さんはそれを逆手に取っている。その試みは功を奏しているとしかいいようがない。
実際、ブラフマンにどうしようもなく心を動かされる。レース編み作家に軽く殺意を覚えたし、「僕」は彼のことだけを見てればよかったのだ。娘なんてどうでもいいだろう、と思った。単純でごめんなさい。
最後、タイトル通りにブラフマンは死ぬのだが、ここで小川さんは仕掛ける。
見事なまでに対比を描き、深い余韻を残す。
いい本でした。
評価は☆☆