道尾 秀介 「 光 」

光

 

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真っ赤に染まった小川の水。湖から魚がいなくなった本当の理由と、人魚伝説。洞窟の中、不意に襲いかかる怪異。ホタルを、大切な人にもう一度見せること。去っていく友人に、どうしても贈り物がしたかったこと。誰にも言っていない将来の夢と、決死の大冒険―。

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道尾先生のスタンドバイミー。小学4年生になる少年達の物語だ。

主人公の少年にお馬鹿キャラ、嫌味キャラ、生い立ちは不幸だが芯の通ったキャラに年上の体育会キャラ(お馬鹿の姉さん)そして、野良犬ワンダと老婆。これだけを書くと、何処にでも居るように思えるが、彼らは非常に魅力的で、個性的でもある。それは彼らのつかず、離れずの距離感がそう感じさせるのだろう。

少年が体験する出来事(冒険ともいう)を淡く描き、章毎に大人目線で語られるあとがきに、気持ちを揺さぶられる。後に仕掛けだったのかと気づかされるが、何の為だったのかは疑問だ。

 

 

 

奇しくも今、本書に出てくる少年とうちの息子が同じ歳。リアルな小学4年生が、この本の通りでは残念ながら、ない。当たり前だけども。

あの頃の記憶というのは残念ながら、ぼんやりとしたモノでしかない。

覚えていただろうクラスメイトの名前と顔。アナログな電話番号。初恋の女の子。もう忘れてしまった。

だけど、いつもの帰り道。寄り道。小学4年生では、どうにもならない事は沢山あっただろうし、その年齢だから出来ることもあった。それが光だったのかは分からないが。

 

道尾らしさは無いが、読後感はいい。

大人が読んで損はしない小説だ。

 

評価は☆☆