山崎 ナオコーラ 「 手 」
- 作者: 山崎ナオコーラ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/01
- メディア: 単行本
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四編からなる短編集。
前回も同じことを思ったが、さらりと読める。
飾り気が無いと言えば聞こえはいいが、人によってはあっさりしすぎて物足りないかもしれない。
さりとて、文章そのものには毒がある。じわりとくる遅延性の毒だ。
殺傷性もなく、麻痺もないけど、じんわり痺れる。そんな感じの毒が、四編には流れている。それぞれの感想を上げると、そんな感じ。
面白いのとは違う。つまらん、というのも違う。多分、この作家が好きか嫌いかなのだ。合う人には合う。駄目な人は駄目。それぐらい分かりやすい話を書く人で、かつ感情移入は全く出来ない。
さて、タイトルである「手」という短編から、ちょっと印象的だった文を抜粋する。
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終わった後
「すっごく気持ち良かった。生きてて良かった! また今日も頑張ろう!」
と森さんが手をグーにして天井に突き上げるので、
「私も頑張って生き続けます」
森さんの肩に手を置いて言った。
「ね? そんな気持ちになるよねえ」
にこにこして森さんが言う。
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そんな風に思えるのは、恋愛してるからだろうと思ったのだが、生理的に付き合えないって森さんが言ったので、何だ身体だけか、と思ったら最後の方で、何だやっぱり恋愛してたんだね。という流れが淡々とした文章にマッチしてて余韻を残す。
「お父さん大好き」という短編からも抜粋。
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朝、目覚めるだけで、表現になる。
「俺はこの世に生きています」
それを身体中が叫んでいる。「まだ生きたい」「世界を味わいたい」
瞬きするだけで、世界を受け入れる。家族の問題や仕事の人間関係、おかしくなってる時でも、毎朝の空気を鼻で受け、瞼に日差しを載せ、指で布団を触ることが出来る。
生きてるだけで、えらい。
俺は、生き続けるだけで、えらい。
朝、というものは、絶対的に美しい。
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そうだよな。生きてるだけで、えらいよな。
さんまも、生きてるだけで、丸儲けって言うてたものな。
何かと生きてたら、色々あるけど、大抵の事はどうにかなるものだ。
朝は美しい、と思える瞬間は未だ俺には訪れてないけれど、生きてるだけで、えらいとは思えるようになった。
人は時間の中で成長していくものだなぁ、とつくづく思う。
感想になってないですね。
評価は☆