木原 浩勝 「九十九怪談 第四夜」

九十九怪談 第四夜 (角川文庫)

九十九怪談 第四夜 (角川文庫)

 

新耳袋シリーズのファンである以上、九十九怪談も追いかけねばなるまい。

さして、感想とかは怪談である以上、身震いがするというしか言葉は無いのだけれど、玉石混合の怪談というカテゴリに措いて、怪談の本質ともいうべき語り口はだんとつだと思う。筆者が怪談の体験者に取材し、紙に記すというのは怪談というカテゴリでは鉄板であるものだが、その徹底的に無駄を省いた文章がたまらなく読み易い。慣れている人なら一時間とかかるまい。

しかし、一気読みするのはお勧めはしない。この本の目次を紐といてもらうと九十九話まで集録されているのが分かる。だが、実際には百話、集録されている。これは何故か? 古来より一晩に怪談を百話語ると怪が来ると云われている。きっと、筆者は読者に怪を与え、それを自らの糧にしようと目論んでいるのだろう。幸いにも私の所には怪は未だ来てないが、もし遭遇したら失禁する自信はあるぜ。ドン!

 

 

それはそれとし、皆さんは怪を信じるだろうか?

何でもそうだが、やはり自分で体験してみないと分からないものだよね。

ここで、自身の体験した話をひとつ。

 

「じいちゃんの部屋」

 

 

私が小学生の時の話。

従兄の家に泊まる事になって二階で、従兄と二人寝ていました。

下では大人達が麻雀に興じており、時折笑い声が二階にも届いてくるので中々寝付けませんでした。

そんな時、音がしました。ミシミシ。

誰かが廊下を歩いてる? 誰か他にも二階に居るのだろうか?

その音は段々、近くなってきます。私は隣で寝ている従兄を起こしました。

起こされた従兄は迷惑そうでしたが、私が廊下を誰か歩いてるよ? 他にも誰か居るの? と、聞くと 

下のお父さん達が上がってきたんじゃないの、他には誰も居ないよ。

階段は従兄の部屋の直ぐ横にあります。でも、階段を上がってきた音はしませんでした。ずっと起きていたので間違いありません。

従兄はジッと耳を澄ませます。ミシミシ。音が聞こえます。

ゆっくりとした足取りです。

従兄は突然、うわぁ!と叫ぶとドアを開け一目散に階段を降りていきます。

私も慌てて後を追います。血相を変えて飛び込んできた私達に下に居た大人達は目を丸くしました。

ど、どうした!

従兄は泣きじゃくりながら、じいちゃんが、じいちゃんが!と叫びました。

それを聞いて私は、あ! と、思いました。

従兄の部屋と廊下を挟んで向かいは、じいちゃんの部屋でした。

そして、今日はじいちゃんの一周忌でした。

 

 

 

評価は★★