太田 忠司 「奇談蒐集家」
- 作者: 太田忠司
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/11/19
- メディア: 文庫
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七編からなる連作短編集。
奇談を現実的に説き明かす、その手法と解釈は特に目新しいものではなく、ミステリ好きならば、容易に種明かしが推察できる事だろうと思う。
帯に「必ず順番にお読み下さい」とあったので(大概は順番に読むとは思うけど)、最後の話で納得した。上手いなあ。こういう、オチか。
こういうのは好きだけど、それだけに一つ一つの話が薄いのが惜しまれるなぁ。
そもそも奇談とは?
文中で奇談蒐集家が奇談について語っている。
「奇妙で不思議な話。この世のものとは思えない、血も凍るような恐ろしい話。世の常識をひっくり返してしまうような、信じられないほど滑稽な話。一度聞いたら二度と忘れられないような突飛な話」
奇談というには違うのかもしれないけど、このような話はどうでしょう?
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「黒い玉」
長男が三歳の時の話。
夕ご飯を食べ、家族でTVを見てたら突然、隣から激しく犬が吠えだしました。隣の犬は非常に大人しく、ここに住んで三年になりますが、ついぞ吠える声なんて聞いた事はありませんでした。
すると、今度は長男が泣き出しました。
それも、号泣で怖い、怖い、と嫁にしがみつきます。
嫁がようやくの事で、長男を落ち着かせます。長男はじっと隣の壁を見ています。聞けば、黒い玉が部屋を横切って壁に吸い込まれていった、と言います。残念ながら、嫁と私には見えませんでした。
黒い玉が消えた壁の向こうは外です。
翌日、隣の部屋の前には盛り塩がありました。
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解説に倣って、「水色の魔人」「金眼銀眼邪眼」が個人的に好きだという事を記しておこう。
評価は★★